正倉院(しょうそういん)の北倉(きたぐら)には、たくさんの薬がおさめられています。聖武天皇(しょうむてんのう)がなくなったとき、光明皇后(こうみょうこうごう)が、ほかの宝物(ほうもつ)といっしょに東大寺(とうだいじ)に寄進(きしん)したものといわれています。またそのほかに、後世(こうせい)になってから追加(ついか)で寄進されたものもあります。
正倉院の薬は全部で60種類(しゅるい)ほどあり、その原産地(げんさんち)は唐、新羅(しらぎ)、ペルシャ、インドなど、さまざまです。
大黄というのはタデ科の植物の総称(そうしょう)で、現在の中国西部が原産(げんさん)です。正倉院(しょうそういん)には、この大黄の根を乾燥(かんそう)させたものが、薬としてたくさんのこされています。正倉院の薬の中でも、一番多く保管(ほかん)されていたのが、この大黄でした。
胃をじょうぶにしたり、便秘(べんぴ)をなおしたりする効果(こうか)があります。
ニッケイ[クスノキ科]の木の皮のことで、現在(げんざい)は香料(こうりょう)のシナモンとしてお菓子や料理(りょうり)に使われています。中国・インドシナ半島が原産(げんさん)です。日本では江戸時代(えどじだい)から栽培(さいばい)されるようになりました。
薬としては、熱(ねつ)さましやいたみ止めなどの効果(こうか)があり、風邪(かぜ)や頭痛(ずつう)、体のいたみなどの治療(ちりょう)に使われます。
「蜜蝋(みつろう)」ともいいます。蜜蝋はミツバチの巣の原料(げんりょう)となるもので、ミツバチが自分の体の中で作ります。ミツバチの巣(す)から蜂蜜(はちみつ)を取った後、のこりの巣を加熱(かねつ)すると蜜蝋がとれます。
正倉院(しょうそういん)の臈蜜には、滋養強壮(じようきょうそう)の効果(こうか)があるとされていました。現在(げんざい)、蜜蝋は皮膚(ひふ)の薬のもとになったり、化粧品(けしょうひん)の材料(ざいりょう)として使われています。
インドイッカクサイの角でつくった杯(さかずき)です。サイの角は毒(どく)を消すといわれ、その角でつくった杯はとても大切にされました。
「毒を消す角」というと、ヨーロッパの伝説(でんせつ)のけもの「ユニコーン」が有名です。ユニコーンは、1本の角の生えた馬のような姿(すがた)をしていますが、実は、そのモデルになったのも、サイだといわれています。
鍾乳床とは洞窟(どうくつ)などでみられる鍾乳石(しょうにゅうせき)のことです。鍾乳石は、炭酸(たんさん)カルシウムを多くふくむ、方解石(ほうかいせき)が集まってできたものです。
滋養強壮(じようきょうそう)のほか、咳(せき)止めや、お乳(ちち)の出をよくするためにも使われていました。
漢方で「龍骨」というと、ゾウやサイなど、昔の哺乳類(ほにゅうるい)の骨(ほね)の化石を指します。正倉院(しょうそういん)におさめられているのは、化石化したシカの角で、その他、歯や骨の化石、象牙(ぞうげ)などもおさめられています。また、「五色龍骨(ごしきりゅうこつ)」や「白龍骨(はくりゅうこつ)」なども一緒(いっしょ)におさめられていたことがわかっています。